[まとめ記事] NVIDIAがVMware対応を強化する意味

ぱくたそ素材

もちろん重要性が高まっていることが理由ですが、その背景としてVMwareの勢いが強まっている点が挙げられます。

この調子で行くとOpenShiftを圧倒し、Nuntanixを買収するという結果になるかもしれません。

今回は周辺動向も含めて紹介させて頂くことにします。

vSphere 7対応

まず今回の発表に気付かなかった人は多いようです。重要発表だと気づいたのは、SiliconAngle誌のPaul Gillin氏などに限られているようです。

発表内容としては、単純です。「NVIDIAがvSphere 7アップデート2に対応しました。以上、終わり!」です。NVIDIAのブログに掲載されているのは、NVIDIA製品とVMware製品の構成図だけです。

これを見て理解するのは、KubernetesとKubernetes関連の各社関係を知っていることが必要となります。

KubernetesとVM

まずNVIDIAの図の青い部分を見ると、ContainersとVirtual Machinesと書かれています。しかしそのアイコンから、これらはKubernetesとVMを表わしていることが分かります。

VMware vSphere 7はプログラム基本構造(アーキテクチャ)が一新され、VMwareの組み込み型Linuxの上でKubernetesとVMware ESXiが実行される形態になっています。つまり今までのようにVMの上でコンテナを動かすのではなく、Linuxの上でコンテナはそのまま動作します。

今までNVIDIAがサポートしていたのは、Red Hat(IBM)のOpenShiftとNVIDIA DGXサーバ上のKubernetesのみです。今回の発表により、VMware

従来のVMwareでは、AIに使用されるNVIDIA GPUをネットワーク型NIVIDA CUDAでリモート実行する形態でした。処理データもリモートで渡す必要があり、100Gbpsのネットワーク環境が必須でした。

それがスタートアップ企業のRun:AIのように、KubernetesでNVIDIA GPU利用をスケジューリングできるようになる訳です。VMware ESXiとのGPUリソース共有なども実現している訳です。

版Kubernetes(製品名:VMware Tanzu Gird)も加わったことになります。

Tanzu上で動くNVIDIAソフトウェア

先ほどの図では、NVIDIA AI EnterpriseがVMware Tanzu上で動作するようになっています。つまりPaaS製品の旧Cloud Foundry OSS (商品名:Pivotal One)をサポートしたことを意味します。

Cloud Foundry Foundationには、IBMを始めとする殆どのITベンダが加盟しています。Microsoftにしても、2017年に加盟しました。

OSSということもあり、IBMやSAPなども積極参加して開発されました。さらに加えるとシーメンス社のMindSphareはCloud Foundryを稼働させるSAP HANAで構成されています。

そしてこれらの環境は、NVIDIAのGPU単品構成だけでなく、NVIDIA SmartNICやDPUもサポートしている訳です。つまり「vSphere 7アップデート2をサポートしました」と簡潔に表現できるものの、発表&記事化に値するだけのインパクトがあるのです。

NVIDAとVMwareの関係

さてNVIDIAはGPU (Graphic Processing Unit) の開発/製造を得意とする会社で、VMwareは仮想化ソフトウェアを開発する会社です。一見するとビジネス的に競合する部分は無さそうです。

しかし実際には、両社は微妙な関係にあります。これは主にRed Hat(IBM)とDellが関係しています。

まずNVIDIAはGPUメーカーとして、Red Hat Enterprise Linux (RHEL) に対応して貰う必要があります。わざわざドライバソフトを手作業で組み込むより、最初からOSに対応ドライバが入っていた方が、利用者から喜ばれます。(ちなみにVMware ESXiに組み込まれている独自Linuxも同様)

そういうこともあってRed HatとNVIDIAは、昔から深く付き合いのある関係です。”Linus Torvalds氏の一件” もあり、Red HatはNVIDIAとの関係に慎重でした。そういうこともあって、OpenShiftのKubernetes化には早期対応を実現していました。

しかしOpenShift競合製品を担ぐVMwareとしては、これは少なくとも歓迎すべき状況ではありません。そしてNVIDIAはGPUだけでなくDGXサーバも製品化しました。このDGXサーバにはDellサーバは採用されていません。(DellはVMwareの親会社)

というあたりで、NVIDIAとVMwareは協力パートナーであると同時に、微妙な関係になっている部分も存在するのです。これがNVIDIAとVMwareの関係です。

またNVIDIAではNvidia PODなどを製品化しており、さらにvSANと競合する仮想化ソフトウェアを担いでいたりします。今回の協業範囲にはSliliconAngle誌のPaul Gillin氏が言及しているように、vSANも含まれています。

そしてNVIDIAではDGXサーバを製造するのを止め、GPUとArm(買収)チップビジネスに専念することになりました。そういう意味では逆に、NVIDIAはVMwareにArmチップ対応をして貰えると嬉しい立場になりました。

(アライアンスというのは、なかなか難しいものです)

関連ベンダの動向

さてRed Hat(IBM)の動向は紹介済みですが、他の関連ベンダの動向もあります。Paul Gillin氏によると、Nutanixあたりになるでしょうか。

VMware、NVIDIA、Pensandoで結成したProject Montreyでは、GPUとESXi/vSAN/NSX搭載SmartNIC構想を発表しました。実現目標も定かではありませんけど、HCI化推進の一環とも言えます。

つまりDGXシリーズに代えて、汎用サーバ+SmartNIC型HCIという構想が浮上して来ます。サーバベンダであるDellにとっては嬉しいことです。

また冒頭のNVIDIA発表の次記事は、NVIDIA+NetAppストレージでした。これが上記の新型HCIもどきで代替できることになります。

さらに大規模共用ファイルシステムを特長とするNutanixはVMwareライバルですが、倒産してくれればVMware/Dellにとって嬉しい話です。NVIDIAにとっても、損な話ではありません。(Nutanix製品への対応の手間や、「安かろう」で競合GPU/CPUを採用されるリスクが減りますので)

まとめ (考察)

以上の通りで、まず確実なこととしては、VMwareにおけるNVIDIA対応が大幅進化したと言えます。

またVMwareとしては、Red Hat(IBM)のOpenShiftへ一矢報いた形にもなります。ユーザにとってVMware Tanzu対応は、少なくとも喜ばしいことでしょう。

さらに一見すると単純なvSphere 7アップデート2対応ですが、実は密かに緊密な関係が構築されようとしている可能性が、ゼロではないかもしれません。(さすがに仮定が重なっているので、確率は低そうですけれども)

いずれにせよ、今後の両社の発展が楽しみです。

それでは今回は、この辺で。ではまた。

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記事作成:小野谷静