ITシステムの変遷:オープンシステムの1993年から、クラウドの2023年

最近は職場でも若い人が増えたけれども、彼らや彼女らの今後を考えると、常に変化を続けるITシステムを語っておくのが良いかと思った。

そこで今回は、今から30年前(1993年)から現在(2023年)までを振り返ってみたいと思う。

なおこれからクラウドを勉強しようと思う若者には、クラスメソッド社さんの一冊をオススメしたい。

1993年:オープンシステム

そもそもコンピュータはIBMのメインフレーム・コンピュータあたりから脚光を浴びるようになったけれども、それが一般企業へ普及するようになったのは1990年頃の話になる。

今ではこれも化石と化してしまったけれども、RISCチップを採用したUNIXサーバと呼ばれるコンピュータが普及した。そしてこれらのコンピュータを接続するネットワークとして、インターネットが普及した。

個人でもパソコンを購入できるようになり、自宅でも個人用パソコンが使用されるようになった。Google ChromeやMicrosoft Edgeなどの始祖鳥みたいな存在である “Mosaic” なるWebブラウザが開発され、インターネットは一気に普及した。

インターネット・バブルとか、ドットコム・バブルなどと呼ばれた。SunサーバとOracleデータベース・ソフトウェアの組み合わせが、ITベンダの売上や利益を押し上げてくれた。

しかし技術革新の激しい世界であり、ドットコム・バブルは新ビジネスモデルの登場と共に、終わりを告げるのだった。

オープンソースソフトウェア

さてRISCチップを採用したUNIXサーバによるITシステムだけれども、これをもっと安価なITシステムへ置き換えたいという動きがあった。

そこで登場したのが、Linuxと呼ばれるオープンソース・ソフトウェアだ。これは個人向けにも利用されるCISC(x86系)チップ向けに登場した。性能や安定性はUNIXサーバには及ばないけれども、「ともかく安い!」というインパクトがあった。

ちなみにLinuxはUNIX系OSの機能や操作性を備えており、UNIXを扱える者であればLinuxも扱えた。

当時は独占的立場を獲得できていなかったAmazonなどは、2006年にRISC SunサーバからPC Linuxサーバへ社内システムを移行した。性能や安定性は、いろいろと工夫して何とかした。

そしてこの流れにより、UNIXサーバは衰退の一途を辿った。Sunサーバを設計・開発するサン・マイクロシステムズはOracle社に買収された。そして一方でPCのCPUとして採用されたIntelは、売上を大幅に伸ばした。

売上や利益が大規模になれば、研究や開発に投入できる費用も増える。メインフレームには遠く及ばないものの、PC Linuxサーバも性能や信頼性を向上させた。

GAFAの成長

そして何よりソフトウェア技術の進歩により、分散システムが実用化段階へと突入した。一対一では勝負にならなくても、一対三という構成でITシステムを構成するようにしたのだ。

たとえ1号機がダウンしても、その処理を2号機と3号機で引き継ぐ。そうすればユーザから見れば、何も生じていないように見える。Amazonが一般向けにもITシステム貸出業(AWSクラウド)を開始したけれども、それは分散システムをフル活用している。

もちろんAmazonやAWSは、オープンソースソフトウェアをフル活用して成長した。そしてとうとう、メインフレームの王者であるIBMと互角に張り合うようになった。

なおGAFAとは、Google、Apple、Facebook、Amazonの4社のことだ。これらの4社は分散システムやPC Linuxを活用するだけでなく、新しいビジネスモデルを採用することによっても成長した。

まずAmazonは当然ながらEC (Electric Commerce) と薄利多売モデルの組み合わせにより、全社売上を大きく伸ばした。GoogleやFacebookは、検索エンジンやSNSを利用する際に広告提供することにより、広告代理業で売上を伸ばした。

「風が吹けば桶屋が儲かる」ではないけれども、誰も彼もが儲かるという図式を実現するのは難しい。既存のITベンダは、徐々に市場における地位を低下させていった。

マイクロソフトの逆襲

さてスターウォーズの「帝国の逆襲」ではないけれども、ここで起死回生の一手を打ってきたのがマイクロソフトだ。AmazonのAWSクラウドのように、Azureクラウドの提供を開始した。

もちろんマイクロソフトが挑戦したのは、それだけではない。Appleのような携帯機器をWindowsベースで開発したり、XBOXというゲーム機やソフトウェアの開発も推進した。

現在ではAWSクラウドには及ばないものの、Azureクラウドで業界二番手の地位を確立している。そしてゲームに関しては、2021年に$68.7Bでゲーム企業を買収した。

なお現在ではゲーム業界は、IT企業から熱い視線を集めている。

最近流行しているメタバースだけれども、MMORPGゲームと同じインフラを必要としている。それからゲームではAI技術が大いに役立つので、ゲーム業界から “新しいAI” が生まれる可能性も存在する。

何よりも売上と利益があれば、研究や開発に投資することが出来る。さすがはマイクロソフトというか、偶然にしても絶好のチャンスを獲得したと言えそうだ。

もちろんこれを誰もが座視している訳ではない。Amazonは顧客ニーズ追求なので大きな興味は示さないが、GoogleやNVIDIAが米国FTCへ懸念表明を提出したとのことだ。

こういった流れがあって、多くの企業では自社でPC Linuxシステムを構築するよりも、クラウドを採用しようという流れが生じている。コンピュータのハードウェアにしてもソフトウェアにしても、分散システム技術などを除くと大きな違いはない。

そんな訳で最近の優秀な学生は、IBMではなくてGoogleへ就職するケースも増えている。PC Linux向けのハードウェア技術者やソフトウェア技術者にしても、クラウド企業へ転職する流れも生じている。

そんな訳でマイクロソフトのように「時代の変化に対応できた企業」を除くと、民族大移動のような事態が業界内で発生している。

まとめ

以上の通りで、僕の知り合いもAWSへ転職する者が生じている。と、いうか、米国では数年で転職するのが一般的だ。かつて僕も、Intelやマイクロソフトから転職オファーを頂戴した。

そんな訳で、IT業界というのは「諸行無常」で「盛者必衰」なのである。若い人たちには、逞しく生き抜いて欲しいと願っている。

それでは今回は、この辺で。ではまた。

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記事作成:小野谷静